2010年11月26日金曜日

高橋亀吉『大正昭和財界変動史』(上・中・下)、八田達夫・高田眞『日本の農林水産業 成長産業への戦略ビジョン』、太田聡一『若年者就業の経済学』

 東洋経済新報社創立115周年記念として、石橋湛山全集及び高橋亀吉著作集が復刊されています。高橋亀吉著作集として復刊されたものの一つが『大正昭和財界変動史』です。部分部分は図書館で読んだり参照したりしていた訳ですが、やはりここは日頃の不勉強を払拭すべく一念発起して通史として読んでおいたほうが良いのではないかと思いなおして、上中下三巻を買い込みました。
上巻は大正編、中巻及び下巻が昭和編という感じです。扱う時期は第一次大戦の好況から、わが国が戦時経済に本格的に突入する昭和15年あたりまでということで、現代の経済社会を考える際の格好の材料を提供していると感じます。三巻合計で2000頁にならんという本ですが、読み出があります。

次は八田達夫・高田眞両氏による『日本の農林水産業』。TPPに関する我が国の対応が先日話題になっていましたが、誰もが望むのは、日本の農林水産業が競争力を有し、生産性を高めることでしょう。経済政策、特に本書で提案されている規制改革(強化及び緩和の双方を含む)を行えば、既得権を失う人が生じるため、政治的に先送りしようとする誘惑が生じるわけです。よって改革とセットで激変緩和策を講じることが必要です。ただし激変緩和策とは、改革を徐々に行うことではないことも注意すべきでしょう。農業及び水産業について現状を纏めた上で、市場の失敗と政府の失敗を区分け・明示化して、経済分析を加えるという本書の体裁を見る限り読むのが楽しみな本です。恐らく、八田先生の『ミクロ経済学Ⅰ、Ⅱ』を読んだ方にとっては実践的な本書を読むことで更に面白いのではないかと感じました。


最後。太田聡一氏の『若年者就業の経済学』。本書は、爾来社会学や教育学の範疇で論じられることが多かった日本の若年雇用問題を、経済学の視点から概観しようという本です。分かりやすい筆致で非常に読みやすい本ですが、若年雇用がなぜ問題となってきたのかという点から始めて、若年失業の変化を失業フローや失業率格差の観点から分析し、更に世代効果といった話題に話が及んでいます。さらに、採用や労働者間の代替関係、地域における若年労働の動向、それから教育訓練、若年雇用政策の展開といった形で、労働需要面及び供給面の両面から説明がなされています。各章の末尾にまとめが付されているのも議論を整理する助けになります。

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