2010年12月1日水曜日

山崎好裕『経済学の知恵 現代を生きる経済思想 増補版』、松尾匡『図解雑学 マルクス経済学』

今日取り上げる二冊は、ともにご恵投頂いたもの。山崎先生、松尾先生どうもありがとうございます。いずれも面白い本です。大変遅くなりましたがご紹介かたがたエントリしてみます。

まず一冊目の『経済学の知恵 現代を生きる経済思想』。こちらは過去の経済学者の思想を紹介することで、経済学の現在をその考え方の次元で分かりやすく伝えることを目的に書かれた本です。著者の山崎先生も仰っていますが、かなり欲張りな本で、スミス、マルクス、セン、リカード、ミル、ハイエク、ケインズ、シュンペーター、ポランニー、ミュルダール、等々・・・といったそうそうたる経済学者の思想の紹介と、その経済思想のどの点が現代的であるのかが論じられています。内容も分かりやすく、経済学に馴染みの無い方でも十分に理解でき、考えさせられる本になっていると思います。全部で26章、26人の経済学者の思想が紹介されていますが、一つ一つの内容は独立していますので、寝る前に一章ずつ読む、興味のある箇所から読む、といったことも可能です。自分個人は日々の話題に拘泥しがちなのですが、一歩引いた視点で経済学の考え方を知る良書だと思います。

 二冊目は『図解雑学 マルクス経済学』。先日NHKでマルクス経済学についての番組が再放送されていましたが、マルクスに関する世間の関心は高いようです。ただし本書にもあるとおり、資本論に基づいたマルクス経済学は現実を説明する力を失ったことで学問的に見捨てられてきたのであって、主流派経済学が現代の資本主義経済の本質的問題点を捉えるのに失敗しているからマルクス経済学に期待するというのは本末転倒です。主流派経済学が想定する「市場」が上手く作動しない状況を説明したのがマルクスだと自分は理解していますが、マルクス経済学を金科玉条のものとして学ぶのではなく、現代の視点でマルクスの発想を発展させることが必要でしょう。見開き一頁の左側に解説、右側が図解という体裁なのですが、情報量が多くて勉強になりますね。章の末尾に配置されているコラムも面白いです。

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